Screenshot 2024-02-01 10.08.46国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院理学研究科の羽飼 雅也 博士前期課程学生、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM※)の柳井 毅 教授、藤本 和宏 特任准教授、国立大学法人 九州大学高等研究院の安田 琢麿 教授らの研究チームは、次世代有機EL発光材料の発光効率を増幅する新しい量子機構の理論的発見に成功しました。

 有機ELにおいて電気的に励起された発光分子は、25%の励起一重項状態と75%の励起三重項状態を形成します。非発光性の励起三重項の蓄積は発光量子効率低下の原因となるため、スピン反転注1)によりこれを励起一重項へと変換して発光させる熱活性化遅延蛍光(TADF)機構注2)が注目を浴びています。

TADF機構は100%に迫る高い内部量子効率注3)を実現できる一方、スピン反転の効率が低いという課題があり、これを克服するための新たな分子設計理論の確立が待たれています。





 本研究では、TADFの律速過程であるスピン反転を飛躍的に高速化する新しい量子機構を発見しました。この量子機構では、分子の振動が誘発するスピン反転効果と、高次の励起三重項状態を用いるスピン反転効果とが協調し合うことでスピン反転が飛躍的に高速化します。この機構に基づく新理論を導き出し、従来理論での見積もりと比べて約1000倍以上のスピン反転速度をもたらす加速効果を生み出すことをシミュレーションから発見することに成功しました。有機EL発光材料の開発は既存の理論に縛られていますが、今後の研究により、本手法が明らかにした新原理に基づく高性能な有機EL発光材料の創出が期待されます。
 本研究成果は、2024年2月1日午前4時(日本時間)付アメリカ科学振興協会「Science Advances」でオンライン公開されました。

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