Screenshot 2024-02-13 08.58.00元シャープ社長で、液晶パネル事業の躍進と低迷を経験した片山幹雄氏(66)に日本の電機産業の衰退の要因や再興に向けた考え方を聞いた。

今や世界をリードできる日本の電機メーカーはなくなってしまった。半導体や液晶パネル、テレビ、AV(音響・映像)機器、白物家電を手がけていた企業は、ことごとく世界の中で地位を失ってしまった。なぜこうなったのか。

テレビや冷蔵庫の「シャープ」や「パナソニック」といったブランドを維持するため、宣伝広告や新製品開発にかかる多額の投資に耐えられなくなったからだ。総合電機メーカーは、家電で売上高を伸ばせるが利益率が低くもうからないため、半導体や液晶で利益をかき集めて家電を支えていた。





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 その半導体や液晶は、巨大な資金が必要な「資本集約型産業」なのに、10社近くが手がけていた日本では投資が分散されてしまった。大量の人材が台湾や韓国に行き、技術が流出した。これは今も続いている。2008年のリーマン・ショック時には円高が直撃した。

スマートフォン時代になり、世界標準となるOS(基本ソフト)を米国に押さえられたことも大きい。実はシャープは、米アップルより早く米国でスマホを販売した。06年に公開された映画「プラダを着た悪魔」の終盤、主人公の女性が噴水に投げたのはシャープ製スマホ「サイドキック」だった。にもかかわらず、OSの開発は残念ながらできなかった。NECや富士通も「ガラケー」の時代はよかったが、スマホ時代になるとついていけなくなった。

 日本の電機産業を立て直すには、もう一度、ものづくりの川上から川下に至る一連のサプライチェーン(供給網)をつなぎ直す必要がある。現在残っているのは部品と材料メーカーくらいで、寸断状態だ。ロボットやドローン、エネルギーなど何か軸になる産業を置き、国と企業が一緒になって旗を振るべきだ。

 国がラピダスや台湾のTSMCなど、半導体の製造分野に多額の補助金を出すのはいい。だが、そこで生産した半導体をどう活用するのか。川下の産業で勝てるシナリオを作らないといけない。ロボットなんかは十分、可能性があるだろう。私自身もサプライチェーンをつなぎ合わせる手助けをしていきたい。

◆ 片山幹雄 =1981年東大工卒、シャープ入社。2007~12年に社長。日本電産(現ニデック)副会長などを経て22年4月から東大生産技術研究所研究顧問。岡山県出身。

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