次世代太陽電池の本命と期待される日本発の「ペロブスカイト太陽電池」。国内外で事業化を目指す研究開発が活発になっている。この競争を日本企業は勝ち抜けるか。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受けてペロブスカイト太陽電池に関する海外の研究開発動向などを調査する資源総合システム(東京都中央区)の貝塚泉・首席研究員に聞いた。
-ペロブスカイト太陽電池の市場展望は。
まだ製品が世の中に出ていない現状で、見通しを判断することは難しいです。まずは、現状の課題がクリアできるかどうか。製品の課題としては、耐久性と安定性があります。大面積化したときに高い変換効率を出せるか。大面積の場合、ペロブスカイトの膜を均質に作製することが難しいため、現在は小面積に比べると変換効率が低い水準にあります。そうした課題を乗り越えた上で量産化が進むことが期待されます。メガソーラーなど大規模な発電事業では、バンカビリティを満たせるかも問われます。
-バンカビリティとは。
融資適格性のことです。事業には当然、資金調達が必要で、金融機関はその採算性を検討します。その際に融資適格の判断を得られるかどうかです。融資は、製品はもちろん、施工業者や保守・点検サービスがそろい、安定したビジネスモデルができてなされます。既存の結晶シリコン系太陽電池はそれらがすでに確立しており、ペロブスカイト太陽電池もそうした面が整わなければ、大規模な発電事業ではシリコン系と同じような使い方はできません。
-ペロブスカイト太陽電池の市場展望は。
まだ製品が世の中に出ていない現状で、見通しを判断することは難しいです。まずは、現状の課題がクリアできるかどうか。製品の課題としては、耐久性と安定性があります。大面積化したときに高い変換効率を出せるか。大面積の場合、ペロブスカイトの膜を均質に作製することが難しいため、現在は小面積に比べると変換効率が低い水準にあります。そうした課題を乗り越えた上で量産化が進むことが期待されます。メガソーラーなど大規模な発電事業では、バンカビリティを満たせるかも問われます。
-バンカビリティとは。
融資適格性のことです。事業には当然、資金調達が必要で、金融機関はその採算性を検討します。その際に融資適格の判断を得られるかどうかです。融資は、製品はもちろん、施工業者や保守・点検サービスがそろい、安定したビジネスモデルができてなされます。既存の結晶シリコン系太陽電池はそれらがすでに確立しており、ペロブスカイト太陽電池もそうした面が整わなければ、大規模な発電事業ではシリコン系と同じような使い方はできません。
-ペロブスカイト太陽電池の事業化の際は、シリコン系の動向も意識する必要がありそうですね。
ペロブスカイト太陽電池でなければ置けない場所での事業であれば競合はしませんが、それ以外の場所で使う場合、変換効率や耐用年数、発電量などから事業性を評価したうえで太陽電池技術が選択されます。
(ペロブスカイト太陽電池は安価で軽く・薄く・フレキシブルな製品が製造できる可能性が期待されますが、)シリコンはシリコンで進化しています。モジュールサイズの標準化やセルに使う銀の量を減らすといった低コスト化の取り組みが進んでいますし、完全なフレキシブルとまでは言えませんが、軽量で可撓性のある製品も登場しています。そうした動向は意識すべきです。
-ペロブスカイト太陽電池について海外メーカーの事業化に向けた動きは。
既存のシリコン系にペロブスカイト太陽電池を積層して高効率化する「タンデム型」の開発が目立ちます。中国の隆基緑能科技(Longi)や晶科能源(Jinko Solar)などシリコン系太陽電池メーカー大手が研究開発のロードマップを作っており、タンデム型を将来の技術と位置づけています。 一方、英国のオックスフォードPVが最も早く製造ラインを作ったと聞きます。商業生産は2024年から開始する予定と報じられています。
-なぜ海外メーカーはタンデムの開発に注力しているのでしょうか。
中国勢はシリコン系太陽電池で市場シェアを占めています。タンデム型によってより高い変換効率を実現することですでにシェアを持つ市場で付加価値の高い製品を供給できるという考え方があるのでしょう。
-オックスフォードPVの狙いはどう読み解きますか。
単体では市場が限られる可能性があると見ているのでしょう。高効率を実現した製品で建物の屋根や電気自動車のなど面積に制約がある場所の設置を狙っているようです。
また、タンデムは単体よりも量産工程が整えやすい可能性が指摘されます。ペロブスカイト太陽電池は単体の場合、一枚の大きなモジュールを利用します。一方、シリコンは小面積のセルをたくさん組み合わせてモジュールを作るので、タンデム用のペロブスカイト太陽電池も、(膜を均質に作りやすい)小面積で利用します。そのためタンデムの方が事業化は早いのではないかという声もあります。もちろんシリコンの層とペロブスカイトの層を接合する技術の確立という課題は残りますが。
-ペロブスカイト太陽電池の研究開発を支援するNEDOの「グリーンイノベーション基金」で採択されている積水化学工業や東芝などは単体の研究開発に注力しています。
単体は低コストのプロセスが実現でき、安定性が確保できれば、多様な応用の可能性が広がります。特に薄く・軽く製造できればシリコン系が置けない(壁面や工場屋根といった)場所に設置できる可能性があるので期待しています。日本は素材メーカーが多く、耐湿性や耐紫外線性などに優れたフィルムを供給しているメーカーがいます。彼らのフィルムを生かして耐久性や安定性に優れた安価な太陽電池を作れれば、強みになるのではないでしょうか。
-中国における足元の研究開発状況は。
非常に活発で、(スタートアップの広東光晶能源(Photon Crystal Energy)が)100MWの製造ラインを作ったという報道もあります。中国・上海で23年に開かれた世界最大の太陽電池の展示会「SNEC」ではペロブスカイト太陽電池の大きなモジュールが出展されており、大規模な実証を始めたとも聞きました。太陽光発電の国際会議「PVSEC-35」でも多くの中国人研究者が研究成果を報告しています。著名な研究者の成果は(世界トップの科学誌である)『ネイチャー』や『サイエンス』でも採用されています。
中国は現状の太陽電池市場をほとんど抑えています。これは研究者にとって(自分の成果を生かせる)出口があるということですから、それは研究者が多い要因になっています。
-中国勢は足元で特許出願数が最多という情報もあり、脅威と言えそうですね。
研究者の厚みが違うという事実は(特許出願件数の多さに)反映されているでしょう。中国はもはや後追いではなく技術を引っ張っていると感じます。また、中国は国内市場の規模が大きく、仮にペロブスカイト太陽電池の事業化に成功したら規模の経済性によって、日本企業が追いつくのは難しくなるかもしれません。
ただし、まだ、勝負はついていない段階ですので、どこがいち早く耐久性や安定性といった課題を克服できるかです。中国は研究者が多いからといって必ずしも(日本の)負けというわけではありません。繰り返しになりますが、日本は素材メーカーが強く技術を持っています。その技術力で、安定性や耐久性を高められれば大きな強みになります。製品メーカーと材料メーカーが協業してよい製品を製造できればよいと思います。
-国際競争に打ち勝つ上で政府に期待したいことは。
性能の評価法などの標準化にもっと予算をつけて欲しいと思います。国際的に標準化をリードできれば、海外で日本製品は優位になります。逆にリーダシップを取れずに、議論が不十分なまま標準化が進められてしまうとそれが障壁になる可能性があります。
-事業化を目指す企業に求められる取り組みは。
(ペロブスカイト膜の均質性を保ちやすい小面積を利用する)タンデムは取り組むべきだと考えます。また、どのように使うか出口を意識した実証を行い、設置やメンテナンスなどの技術開発を進めることが重要です。その意味で、積水化学はグループ会社に住宅メーカーという出口を持っていますし、パナソニックは窓やバルコニー用のガラス建材一体型製品での事業化を目標に掲げています。そうした体制を生かした取り組みに期待したいです。
※記事の出典元はツイッターで確認できます⇒コチラ
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