Screenshot 2024-03-27 08.56.49ジャパンディスプレイ(JDI)は2024年3月、株式上場(2014/3/19)から10年を迎えた。

東芝、日立製作所、ソニーグループの中小型液晶事業が統合し発足したが、中国や韓国のパネルメーカーとの競争に敗れ一時は債務超過となった。
株価は上場後の高値から約40分の1に沈む。稼ぐ力が細る中、運用会社傘下で中国企業との提携にかける。

2月、千葉県茂原市にあるJDIの主力工場で、最新の製造装置の搬入が完了した。同社が経営再建の柱に据える新型の有機ELパネル「eLEAP(イーリープ)」を25年1月までに量産するためだ。通常の有機ELパネルと比べ輝度が2倍高く、寿命も3倍長いという。

JDIはまず茂原工場でスマートウオッチ向けに1.4インチの小型パネルを生産し、数年内に国内外で車載やタブレットPC向けに対応する。

JDIは12年、経済産業省傘下の産業革新機構(現INCJ)が主導し発足した。出資比率はINCJが7割、旧3社が1割ずつ。14年3月19日の新規株式公開(IPO)にこぎつけたまでは良かったが、直後に業績を下方修正した。 株価は公募価格900円を一度も上回ることはなく、3月26日時点の株価は22円と低迷する。
経産省が主導する国家プロジェクトにもかかわらず、多くの投資家を失望させた格好だ。
ディスプレー市場のシェア推移をみると、JDIの劣勢が鮮明だ。米調査会社DSCCによると液晶パネルのJDIのシェアは16年時点で7.9%だったが、22年には2.3%と、3分の1に減った。パネルは技術が陳腐化しやすい。中韓が投資を積極的に進めた結果、JDIは生産量や価格競争で押された。
「あの時の決断がなければ……」。JDIの現幹部は嘆く。

「あの時」とは9年前の15年3月、白山工場(石川県白山市)の投資決定だ。約1700億円を投じ当時先端だった第6世代の液晶を量産し、16年の稼働後は生産能力が2割高まる計画だった。 大型投資が裏目に出たと分かったのは、稼働を年内に控えた16年1月だった。

米アップルの調達担当者からオンラインミーティングを持ちかけられた。 JDI幹部らの悪い予感は当たった。「白山工場の建設を今すぐ止めてください」。アップル側はこんな要求をしてきたのだ。
白山工場はアップルから返済義務のある前受金を借り、アップルの製品向けの製造装置だけが置かれた「実質アップル専用工場」(JDI元幹部)だった。

16年3月期はJDI全体の販売金額のうち54%をアップルが占めた。

アップルの要請は、JDIが大型投資の負債を抱え、主要顧客の注文を減らすことを意味した。
予兆はあった。15年秋に発売した「iPhone 6s」の販売が振るわず、アップルは液晶採用を取りやめて有機EL採用へと急速に傾倒していた。だが建設中止要請を受けた時点ですでに遅かった。建屋はほぼ完成し、製造装置はすでに発注済みで建設中止すれば巨額の違約金が発生するところまできていた。

JDI経営陣も「このまま液晶主体の白山工場に資金を投じて回収できるのか」と何度となく議論した。しかし「リンゴ様がやれと言うのなら」(当時の幹部)と主体性なく流され、技術動向を読み間違えた。それまでも同社は筆頭株主のINCJの指示どおりに動き、自社の行く末を左右する大きな決断をしてこなかった。 もともと白山工場はアップル以外の顧客獲得を想定して装置を増設するスペースが残されていたが、実際には追加投資が実行されることはなかった。

JDIは中国のスマートフォンメーカーの開拓に動いたものの、アップルの穴を埋めるまでには至らなかった。

....(下)へ続く。

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