Screenshot 2024-04-30 09.15.57今年の年初以降、韓国の株式市場で最大の時価総額を誇るサムスン電子と、第2位のSKハイニックスの2社の明暗が分かれている。一部の専門家からは、「韓国経済の主役が変わりつつある」との指摘も出ている。

サムスン電子の株価が3.8%下落した一方、SKハイニックスは20.8%上昇した。両社の株価動向に大きな影響を与えたのは、世界経済の環境変化に対する動き、特にAIへの対応力の差といえるだろう。
  SKハイニックスは、AIのディープラーニング(深層学習)に必要な広帯域幅メモリー(HBM)チップを競合他社に先駆けて投入し高いシェアを獲得した。  

一方、サムスン電子はスマホ需要の飽和、それによるメモリー半導体事業の回復の遅れ、デジタル家電分野で中国企業の追い上げなどによって業績不透明感が高まった。
今後、韓国経済の成長にとって、SKハイニックスの成長は一段と重要になるだろう。

 重要なポイントは、サムスン電子の業績の推移だ。同社の収益力が低下すると、韓国経済全体に無視できないマイナスの影響が及ぶ。多くの事業ポートフォリオを抱えるサムスン電子が、次世代メモリの製造技術を強化し、高いシェアを獲得することは容易ではないだろう。

 サムスンの業績に対する懸念は、足許のウォン安の一因と考えられる。

 2022年11月、米オープンAIが生成AI“チャットGPT”を公開した。韓国主要企業のなかで、SKハイニックスは迅速にAI成長に対応。2013年、SKハイニックスは世界初といわれるHBM(High Bandwidth Memory)を開発した。

 それ以降、積層技術を強化しデータ処理能力を高め、エヌビディアとの関係も強化してHBMの供給を増やした。

HBMはDRAMを積み重ねて、データ転送スピードを引き上げたメモリだ。それは効率的なAIの深層学習を支える。一般的なDRAMに比べ価格は6~7倍高いようだ。

需要が急速に拡大する高価格帯の製品供給体制を強化したことで、2023年10~12月期、SKハイニックスは主要半導体メーカーの中でいち早く黒字転換を実現した。

一方、2023年通期、サムスン電子の半導体事業は営業赤字に陥った。2024年1~3月期の速報ベース決算で、半導体部門は黒字転換したと報じられた。

 先端技術の実用化でもサムスン電子はSKハイニックスの後塵を拝した。サムスン電子のビジネスモデルはスマホ、デジタル家電、メモリー半導体の製造とファウンドリなど多岐にわたる(コングロマリット経営)。それゆえ、先端分野に集中的に資本を投じることが難しかったようだ。

 サムスン電子にとって最重要の輸出先であった中国は、今や競争上のライバルに変化した。世界のスマホ需要の飽和によって、NAND型フラッシュメモリーの回復は、AI成長に支えられたDRAM市況に後れを取った。

 サムスン電子は、HBMという高価格帯の製品創出強化よりも、在庫の圧縮を優先せざるを得ない時期が続いた。ファウンドリ事業で、台湾積体電路製造(TSMC)とのシェアも拡大した。

守りの経営を強いられる
 1993年、サムスン電子のトップ(当時)だった故李健煕(イ・ゴンヒ)氏は“妻と子以外はすべて変えよう”と号令を発した。

 同社は、成長期待の高い分野で迅速に大量生産体制を確立するなど、成長を実現した社員を高く評価する経営風土を醸成した。しかし、現在のサムスン電子にとって、そうした改革を実行することは難しいようだ。

 サムスン電子はSKハイニックスとのHBMシェアの差を縮めるために、研究開発を強化している。

 それでも、複数の事業を抱えているため、的を絞った成長戦略の強化は難しい。スマホなどの分野での中国勢との価格競争が激化しているため、守りの経営を重視せざるを得ない事情もあるだろう。

 対照的に、SKハイニックスはAI需要の増加に対応するために日米台など海外事業を強化している。SKハイニックスはTSMCと協業し、2026年から“HBM4(第6世代のHBM)”の量産を目指す。

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