新型コロナウイルスの収束後も在宅勤務が定着した米国の首都ワシントンで、地下鉄の経営難やビルの空室率、飲食店の廃業が大きな問題になっている。人が減った市街地は犯罪発生率も上昇した。アフターコロナ時代に表面化した課題について、専門家は「米国の都市部に共通する深刻な問題だ」と指摘している。
平日朝のラッシュ時、中心部の地下鉄の駅に足を運ぶと、ホームに行列はなく、列車は空席が目立った。通勤客の女性は「コロナ前は並んで次の列車を待ったが、今は楽に座れる」と語った。
ワシントンと隣接2州を地下鉄などで結ぶ鉄道網は交通の大動脈で、コロナ前は1日平均で約50万人が乗車した。しかし、コロナ禍の2020、21年は10万人台に激減。感染が収束期に入った22、23年も4~6割の水準の20万人台にとどまった。
平日朝のラッシュ時、中心部の地下鉄の駅に足を運ぶと、ホームに行列はなく、列車は空席が目立った。通勤客の女性は「コロナ前は並んで次の列車を待ったが、今は楽に座れる」と語った。
ワシントンと隣接2州を地下鉄などで結ぶ鉄道網は交通の大動脈で、コロナ前は1日平均で約50万人が乗車した。しかし、コロナ禍の2020、21年は10万人台に激減。感染が収束期に入った22、23年も4~6割の水準の20万人台にとどまった。
国の調査によると、ワシントンでは22年時点で労働者の25%が在宅勤務を続け、コロナ前の5%程度を大幅に上回った。政府機関や企業で働くホワイトカラーは現在も、自宅からリモートワークをする人が多い。
通勤客離れで、地下鉄などを運行するワシントン首都圏交通局は苦境に立つ。23年には駅の大幅な廃止や減便、料金の値上げ、リストラ策を公表。利用者の反発を受け、当面は公的な財政援助の拡充でサービスは維持される見通しだが、明るい材料は乏しい。一等地のワシントンのオフィスビルからは、従業員のデスクや会議室が不要になった企業の退去が続く。大手不動産会社の調査では、23年末の空室率は2割を超えた。
ビジネスマンのランチや飲み会の需要に応えてきた飲食店の打撃は大きい。ワシントンの業界団体の調査では22、23年に計約100店が廃業。昨年、閉店したピザ店には「リモートワークへの変化で店を続けられなくなった。ベストは尽くした」との紙が張られたままになっている。
さらに、ワシントンは治安の悪化が深刻で、街を歩く人が減ったこととの関連性が指摘される。23年は殺人や強盗を含む暴力事件が前年比で約4割も増加し、車の強奪事件は1000件近くに。市民の不安は強く、一時は、プロバスケットボールNBAの八村塁選手(レーカーズ)が新人時代に活躍したウィザーズの本拠地などを隣接州に移転する計画が持ち上がったほどだ。
バイデン政権は在宅勤務のマイナス影響を重くみて、政府機関などに出勤の回数を増やすよう促しているが、効果は限定的だ。
「もう、柔軟な働き方が当然の時代だよ」。ワシントンのITコンサルタント会社に勤める男性(43)はコロナ前は週4日間、顧客の政府系機関に通勤したが、現在は自宅からのオンラインが主で、ほとんど出勤していないという。「行き帰りの無駄な時間がなくなり、効率的だ」と強調し、「在宅勤務を選ぶ人には、保育所やペットシッターなどの高額な費用に負担を感じる人も多い」と話した。
在宅勤務の一般化について、ジョージタウン大のシャリー・ポシェ助教授(都市経済学)は「大半の大都市が中心部の活気が戻らず、解決策を模索している」と語る。通勤者の減少に合わせて公共交通機関の運行を縮小する政策は、サービス業などをさらに低迷させ、税収が落ち込む悪循環に陥ると指摘。「コロナ前はビジネスが街のメインだったが、娯楽性や社会的な交流など、都市ならではの魅力を開発していくことが必要だ」と訴える。
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