Screenshot 2024-05-06 14.19.15ジャッキー・ユーさん(48)は10年以上前、香港で日本製品のギフトショップを開いた。当時、観光・ショッピングで名高い旺角地区は、売店や飲食の屋台、そして観光客の熱気で溢れていた。

時は流れて12年後。旺角のあちこちで生き残りのための苦闘が続く。
顧客の海外移住、中国本土でのショッピングや円安を利した日本への旅行を選ぶ地元住民、観光客の激減といった悪条件が重なったためだ。 ユーさんは、実店舗を閉めてオンライン販売に移行するという「胸が張り裂けるような」決断を余儀なくされたと語る。 売れ残った文具や玩具を収納ボックスに詰めながら、ユーさんは「話をしようにも泣きたくなってしまう」と言う。

「観光客の姿は少ない。中国本土からもほとんど来ていない」





香港では、コロナ禍終息後の回復が遅々として進まない。コロナ禍による3年におよぶロックダウンを経て、他国出身者の多くはこの地を離れ、観光客の数はコロナ前の水準とは比較にならないほど減少した。ここに来て、家賃の高騰と人手不足も追い討ちをかけている。

経営者らはショッピングモールについて「死んだも同然」と表現する。人通りは少なく、店舗には「入居募集中」や「近日開店」という掲示が目立つ。
会計士部門から選出された立法会議員である黄俊碩氏は4月26日、立法会での報告で、2024年の第1四半期の登記抹消件数が昨年同期比で70%以上多い2万社以上に達したと述べた。
香港飲食関連産業協会の黄傑龍会長は、公共放送の香港電台(RTHK)で、ここ1カ月で推定200-300軒の飲食店が廃業したと述べ、この傾向が続くとの見方を示した。
李家超香港行政長官は30日、廃業の増加に対する懸念を一蹴した。
「世界は常に変化しており、さまざまな産業が適応を迫られている。うまく行かない経営者が出てくる一方で、新規参入組が市場に登場しつつある」
5月1日からのゴールデンウィーク休暇は、これまで物販・娯楽産業にとっては書き入れ時だったが、楽観的になれない企業は多い。
「ゴールデンウィークにはあまり期待していない」と語るのは、旺角・女人街の麺料理店で働くウェンディさん(54)。

「この通りにも観光客が大勢いたが、今はどこかに消えてしまった」
香港住民も地元の店から離れつつある。外食やエンターテインメントを求めて中国本土に行き、中国南部の都市、深センに足を運ぶ。その方が価格も安いしサービスもいいという。
野村の中国担当チーフエコノミストとして香港に拠点を置く陸挺氏は、「香港住民の消費行動が北に向かうというのは、明確なトレンドになっている。週末には多くの香港人が深センに行って消費する」と語る。
「理由は、深セン、広州、そして長沙でさえ、この5年間で物価がほとんど変化していないからだ。だが香港は違う。本土との価格差は拡大しており、だからこそ香港の人々は消費のために北に向かおうという気になっている」 
香港は昨年、コロナ禍終息を受け、中国本土との通行を再開した。香港観光委員会の記録によれば、2023年の大陸からの観光客は、コロナ禍前の2019年と比較して38.9%落ち込んだという。

大陸からの日帰り観光客による消費は2023年に36.4%減少し、2019年の1人あたり平均2200香港ドルから、昨年の通行再開後は1400香港ドルになった。
本土との境界線に近い上水地区の住民は、以前であれば、化粧品、医薬品から日用品まであらゆるものを買おうと中国本土から押しかける訪問者のせいで街がひどく混雑し、家賃も高騰する、と不満を漏らしていた。だが、この地区でも今は閑古鳥が鳴いている。
上水地区で化粧品店を経営するリーさん(30)は、地元の消費者は今では深センで買物をする風潮があり、「閑散期」の到来が早くなったと語る。
旺角地区でハンバーガー店を営むリーさん(35)は、行き来が再開して以来、業績が悪化していると語った。
「夜8時を回れば誰もいない。休日になれば、さらにひどい。観光客は1人もいない。先のイースター休暇の時など、店で3時間うとうとしても問題ないくらいだった」

※記事の出典元はツイッターで確認できます⇒コチラ