ペロブスカイト太陽電池は基板にフィルムかガラスを用いる。フィルムを用いると曲げられる太陽電池が作製できる。フィルム基板には一般に酸化インジウムスズ(ITO)を成膜して透明電極とする。透明電極は光の透過率が高く、シート抵抗値は低いほどよい。透過率は吸収できる光の量に影響し、シート抵抗値は電気の流れやすさを左右する。
一般に透過率は80%以上、シート抵抗値は20Ω/square(オームパースクエア)以下が要求される。ITOは希少金属で高価なインジウムを含むため、その使用量を減らす低コスト化の取り組みも求められる。
一般に透過率は80%以上、シート抵抗値は20Ω/square(オームパースクエア)以下が要求される。ITOは希少金属で高価なインジウムを含むため、その使用量を減らす低コスト化の取り組みも求められる。
麗光(京都市右京区)は真空中でアルゴンガスなどを用いて成膜するスパッタリング技術により、シート抵抗値15Ω/squareで光透過率87%のITOフィルムを2023年に開発した。同社は従来品において、ITOの結晶ではなく微結晶を成膜していた。結晶は固く割れやすいため、曲げに弱いからだ。一方、結晶で低いシート抵抗値を実現する場合、微結晶より膜厚は薄くて済む。その分、光透過率を高められる。
新開発のITOフィルムは成膜工法を改良することで、曲げ耐性の高い結晶の成膜に成功した。光透過率は従来の微結晶タイプの82%から5ポイント向上した。同社の幾原志郎取締役は「曲げに強く、シート抵抗値15Ω/square、透過率87%の性能を持つITOフィルムは他にないのでは」と胸を張る。
課題はコストだ。前出の通り結晶は微結晶に比べて膜厚が薄くて済む。そのため、希少金属であるインジウムを使う量は減る。ただ、結晶の成膜は難しい処理が必要なため、製造プロセスのコストが上がってしまう。このプロセスを最適化し、低コストを図っていく。
フィルム基板は一般にPETフィルムを用いる。その代替材料として耐熱性が高い「ポリイミドフィルム」が注目されている。PETフィルムに比べて高価だが、PETフィルムでは耐えられない200℃以上の高温の成膜処理に対応できるため、ITOの結晶化を促進でき、より光透過率の高い薄膜で低抵抗を実現できる可能性がある。また、フィルム基盤の耐熱性は完成品における耐久性にも貢献する。
ポリイミド樹脂を手がけるアイ.エス.テイ(I.S.T、滋賀県大津市)は本来、茶褐色のポリイミドの性能はそのままに透明性を高めた、つまり太陽電池に用いる場合は光透過率が高い透明ポリイミドフィルムを開発した。耐熱性は300℃以上で、1m以上の幅のロール製品を月10万㎡生産できる体制を持つ。
同社は、ポリイミド樹脂の材料開発から製造ラインの構築までを一貫して手がける。透明ポリイミドフィルムは02年に研究を始め、10年をかけて50cm幅の製品を開発した。さらに研究開発を続け、18年に1m幅の製造ラインを確立した。透明ポリイミドフィルムは海外メーカーも複数手がけるが、I.S.Tの製品は他社品に比べて耐熱性がより高いほか、寸法安定性などが良いという。同社の森内幸司執行役員は「ロール製品の安定的な製造は技術の難易度が高い。(一貫体制により)製造ライン側の細かなフィードバックを基に材料を設計できる強みを生かして実現した」と力を込める。
透明ポリイミドフィルムはすでにXRヘッドセットのディスプレイ部分に採用されており、今後はLEDフィルムディスプレイの基板向けなどに展開する予定。ペロブスカイト太陽電池の適用に向けては、同電池の生みの親として知られる桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授らと3月に共同研究を始めた。最適な透明電極の成膜方法などを研究している。
ポリイミドフィルムをめぐっては、ペロブスカイト太陽電池の事業化を目指すカネカも自社製品を持つ。同社はそれを基板に用いたフィルム型ペロブスカイト太陽電池の研究開発を進めている。
※記事の出典元はツイッターで確認できます⇒コチラ
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