00_mAppleは長年、スマートウォッチ向けマイクロLEDの開発に取り組んできましたが、2024年3月にこのプロジェクトが中止されたことが報じられました。フランスの調査会社であるYole Groupが、AppleがマイクロLED開発から撤退したことによる業界への影響を論じています。

Appleは「より明るく鮮やかなビジュアル」を特徴とするマイクロLEDを使ったディスプレイの開発に長年取り組んできました。マイクロLEDとは、従来のLEDを細分化した物で、より精密な発光制御と高画質化が図れる技術です。

Appleはこれまで、独自の製造施設を建設してマイクロLEDの設計や開発を進めていました。しかし、マイクロLEDはOLEDよりもはるかに実現が難しく、開発は難航。いずれiPhoneやApple Watchなどに搭載されることが期待されていましたが、開発にかかるコストやプロセスの複雑さがあまりに大きいことが判明したため、2024年3月に開発プロジェクトは終わりを迎えました。





オーストリアの集積回路製造企業であるAms-OSRAMは、AppleのファブパートナーとしてマイクロLEDの開発に携わっていました。Ams-OSRAMはマイクロLEDの開発に当たり、マレーシアのクリムに総額10億ドル(約1600億円)規模の開発拠点を設立していましたが、AppleがマイクロLEDの開発プロジェクトを中止したことにより、6億ユーロ(約1000億円)~9億ユーロ(約1500億円)の減損損失が発生したほか、従業員の解雇など大きな打撃を受けました。

Yole Groupの主席アナリストであるエリック・ヴィレイ氏は「Ams-OSRAMを含めたAppleのファブパートナーは、2026年に予定されていた最初のマイクロLED採用Apple Watchの製造に向け、合計13億ドル(約2000億円)以上を費やしていました。にもかかわらずAppleはなぜこのプロジェクトを白紙に戻したのでしょうか」と指摘しています。

しかし、Ams-OSRAMはAppleとのファブパートナー以外にも複数の収益性の高い製品ラインを保有しているほか、Apple Watch向けのマイクロLED開発に関する装置や設備を売却することで損失を補塡(ほてん)することが可能です。そのためYole Groupは、AppleによるマイクロLEDからの撤退がAms-OSRAMにとって致命的な打撃にはならないと楽観視しています。

さらに、数多くの企業はマイクロLEDをスマートウォッチやスマートフォンなどに搭載するだけでなく、拡張現実(AR)技術などに導入することに取り組んでおり、マイクロLEDの用途が多岐に渡ることも指摘されています。Yole Groupは「自動車やAR、高級消費者向け製品など、高度に差別化されたアプリケーションに重点を移し、その後、より一般的な消費者市場への拡大を試みることで、マイクロLED業界は生き残ることができるでしょう」と語りました。

近年では、マイクロLEDの開発はAUOやPlayNitride、Ennostarといった台湾企業によって積極的に推し進められており、Appleの撤退によってこれらの企業が事実上のマイクロLED市場におけるトップとなりつつあります。さらに、AppleがマイクロLED開発から撤退したことによって開いた穴に台湾の鴻海(Foxconn)やそのグループ企業の群創光電(Innolux)、また、その他の中国メーカーが進出する可能性も示唆されています。

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