211907016072024FFJ000-2半導体の先端パッケージング(封止)工程にガラスなど長方形のパネル基板を用いる技術が台湾で注目されている。円形基板を使う従来手法に比べ量産効率を高められる可能性がある。液晶大手の群創光電(イノラックス)は年内に量産を始める予定だ。

台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業系のイノラックスは台湾南部・台南にある旧世代の液晶工場を半導体パッケージングに転用した。パッケージ内のチップを外部とつなぐ「再配線層」をつくる土台として長方形のパネル基板を使う。

半導体の量産工程はシリコンウエハーに微細な回路を形成する「前工程」と、できあがったチップを封止・検査する「後工程」とに分かれる。近年は薄型化や性能向上につながる「先端パッケージング」と呼ぶ特殊な後工程の重要度が増している。





その先端パッケージングにパネルを使うメリットは量産性にある。イノラックスは700ミリ四方の金属基板や、620ミリ×750ミリのガラス基板を使う。従来の主流だった円形基板の7倍近い面積で、一度に大量のチップを処理できる。

イノラックスは想定用途を衛星や車載向けなどと説明する。台湾メディアによるとオランダ半導体大手のNXPセミコンダクターズが当初の顧客となる見通しだ。

初期の生産能力は月1000枚で、経営トップの洪進揚・董事長は3月の記者会見で「既に(顧客からの)予約が埋まっている」と明らかにした。年内に3000~4500枚とし、今後は最大1万5000枚まで拡張する計画だ。

ガラス基板を使う技術は台湾経済部(経済省)の支援を受け、当局系の工業技術研究院(ITRI)と共同で開発した。台湾市場には鴻海子会社でパネル技術を持つシャープとの連携を期待する声も広がる。

パネル基板を用いた先端パッケージングは2010年代に注目され始め、台湾や韓国の半導体・電子部品メーカーが一部用途向けに提供してきた。ここにきて参入メーカーや手法の多様化が進み、普及が加速する見込みが出てきた。

用途拡大に向けては加工精度や歩留まり(良品率)といった課題が多く、今後の開発動向次第の面が大きい。製造装置や材料の対応を進めるうえで「会社ごとにパネルサイズがまちまち」(日系装置メーカー)という壁もある。

技術の本格普及に向けて、半導体の受託生産会社だけでなく、液晶など業界をまたいだ開発競争が始まりそうだ。競争から生まれる技術革新に期待がかかる。

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