ジャパンディスプレイ(以下、JDI)は2024年8月9日、2025年3月期(2024年度)第1四半期(4~6月)連結決算を発表した。売上高は前年同期比6%増の559億円、営業利益は同68億円増で70億円の赤字、純利益は同57億円増で65億円の赤字になった。
車載およびスマートウォッチ/VR(仮想現実)での売り上げ増加に加え、製品ミックス改善や固定費削減、在庫効率化によって損失を大幅に圧縮。EBITDAは51%、営業利益は49%、純利益は53%の改善となった。
JDIのCEO(最高経営責任者)を務めるスコット・キャロン氏は、「赤字があっていいとは思っておらず、大幅な改善だが、これでは不十分だと認識している」としつつも、「前年同期比で損失を大幅圧縮できた。黒字転換に向け着実に進んでいる」とコメントした。
2024年度通期予想については2024年5月発表のものを据え置いた。売上高は前年度比174億円減の2218億円、営業利益は同159億円増で182億円の赤字、純利益は同177億円増で266億円の赤字となることを予想。EBITDAは下期に黒字化を達成するとしている。
2024年度第1四半期の業績は、同社がコア事業と位置付ける車載およびスマートウォッチ/VR(仮想現実)など向けは堅調に推移し、前年同期比11%増の500億円となった。一方、スマートフォン向け液晶などノンコア事業は同27%減の59億円となった。JDIはノンコア事業については戦略的縮小を継続していて、同社CFO(最高財務責任者)の坂口陽彦氏は「意図した形で売り上げが推移している」と説明していた。
営業利益はコア事業での売り上げ増加に加え、製品ミックス改善や固定費削減、在庫効率化によって損失を大幅に圧縮し、EBITDAは51%、営業利益は49%の改善となった。純利益はこれらに加え2024年4月に完了した旧東浦工場の売却による固定資産売却益17億円を計上し、53%の改善となった。
売上高を事業および分野別にみると、コア事業うち車載向けは新製品を含む需要増および円安効果によって前年同期比15.5%増の336億円となった。同社は車載向けについて「長期供給契約に基づいた安定性の高い成長ドライバー」と説明。2024年12月から量産開始予定の次世代OLED「eLEAP」や、同年8月2日に発表した、見る角度によって異なる2つの映像を1つのディスプレイで表示できる技術「2 Vision Display(2VD)」などの新規技術に基づく製品の商談も活発だという。
スマートウォッチ/VR向けでは、VRの需要減があるものの、スマートウォッチ用のOLEDの需要が拡大し同41%増収となったことから、全体としては同3.6%増の164億円で着地した。
ノンコア事業のスマホ向け液晶は前述の通り「撤退に向けて粛々と縮小を進めている」(坂口氏)ことから同26.9%減の59億円となった。なお欧米向けでは同16%減の54億円、中国向けは同71%減の5億円となっている。JDIはスマホ向け事業について、「eLEAPを通じて競争優位性をもって、より収益性の高い形で再参入する」としている。
営業利益の増減要因をみると、数量減の影響(-12億円)はあったものの、在庫効率化などの影響(+40億円)や為替の好影響(+14億円)、固定費削減効果(+9億円)、ノンコア事業からコア事業へのシフトおよび車載事業における不採算ライン縮小/撤退の進展などによるミックス改善(+18億円)によって、前年同期の139億円の赤字から今四半期は70億円の赤字と、損失をほぼ半減させている。
なお、営業利益を前四半期比で見ると赤字が5億円増加したが、同社は「これは基本的に数量減によるものだ。当社は季節性要因として第1四半期が四半期の中で最も売り上げが低い。本年度も同様の季節性の効果が出ている」と説明している。
キャロン氏は今回、2024年12月に量産開始予定のeLEAPについて、現在歩留まりが70%以上(同年5月の発表時は60%以上と説明)にまで向上していると明かした。同氏は「計画を上回るぺースで開発を進めている。eLEAPはこれまでにないOLEDの性能と低コストを実現でき、顧客からの引き合いは非常に強い」と述べ、生産能力拡大に向け、中国安徽省蕪湖市との、共同で中国内にeLEAPの大規模工場を立ち上げる計画についての協議が順調に進んでいるとした。
JDIは2VDの他、2527ppiの高精細2.15型ディスプレイ、さまざまな素材の表面をタッチパネルへ変貌させるインタフェース「ZINNSIA」、5G(第5世代移動通信)液晶メタサーフェス反射板などを相次いで発表しているが、キャメロン氏は、業界において過当競争が起きている問題に触れ、「『世界初、世界一』をJDIとして作り上げることが必要だ。唯一無二を確保したうえで、顧客が求める性能かつ安価で作れば、プライシングパワーがついてくる。これからの収益基盤の土台作りとして非常に重要であり、着実に進める」と述べた。
キャロン氏はさらに地政学的な緊張感の高まりについても言及した。同氏によると、地政学的リスクを低減するため、戦略的生産拠点として日本の重要度が増大しているといい、同氏は「JDIの存在価値は飛躍的に向上していて、顧客からの引き合いが急増している」と説明。特に自動車メーカーからの引き合い急増が目立つという。同氏は「こうした追い風によってようやくわれわれの顧客のための供給力、ソリューション提供力、問題解決力をフルに発揮できるのではないか。非常に大きな構造的な変化であると認識している」と強調した。
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