テレビ用液晶パネルの市況が悪化している。7月の大口取引価格は大型の指標品が前月比1%安く、7カ月ぶりに下落した。個人消費が停滞する中国を中心にテレビ販売が伸びず、在庫が膨らんだテレビメーカーが調達を抑制している。年末商戦の需要期を前に、パネルメーカーは生産調整に入ったようだ。
大口取引価格は売り手となるアジアのパネルメーカーと、買い手となる国内外のテレビメーカーが月ごとに決める。
7月の大口取引価格は大型品の指標となるTFT55型オープンセル(バックライトがついていない半製品)が1枚131ドル前後と、前月比1ドル(1%)下落した。前月比での値下がりは2023年12月以来、7カ月ぶりだ。
小型品で指標となるTFT32型オープンセルは1枚37ドル前後。前月比1ドル(3%)安く、55型と同様に7カ月ぶりに下落した。
テレビメーカーは3〜5月にかけて液晶パネルの購買数を増やしてきた。中東情勢の緊迫化に伴うスエズ運河の輸送停滞を受けて供給が減少するとの警戒からパネルを急ぎ確保する動きが広がったうえ、6〜7月のサッカー欧州選手権や7〜9月のパリ五輪・パラリンピックでテレビの需要が増えると見込まれたことが主な理由だ。
だが中国を中心に消費が振るわず、テレビの需要は弱かった。米調査会社DSCCによると、中国電子商取引(EC)大手、京東集団(JDドットコム)の6月の大型セール「618商戦」では、テレビの販売台数が前年比20%減った。パリ五輪向けなどについても期待通りの販売増はみられなかった。
DSCCの試算によると、2024年1〜6月のテレビ販売台数は、世界全体では前年同期比1%減だったのに対し、中国は10%減と需要の弱さが鮮明だ。中国では不動産市況の低迷が長引き「新居への移転に伴うテレビの買い替えは見込めない」(市場関係者)との声もある。
日本でも、テレビ離れや物価高による買い控えなどから、テレビの出荷台数は減少傾向だ。電子情報技術産業協会(JEITA)によると、23年度の薄型テレビの国内出荷台数は前年度比6.9%減の435万9000台と、過去10年で2番目の少なさだった。24年度も低迷する予測だ。
一般に四半期ベースでは、パネル需要のピークは7〜9月とされる。年末商戦向けの調達が本格化する時期だからだ。
だが、テレビ販売が伸び悩む現状を踏まえ、テレビメーカーはパネルの調達を抑制している。パネルメーカーもこれ以上の在庫の積み上がりを避けるため、生産ペースを落とした。液晶パネルの工場稼働率は5月が87%、6月が84%、7月が83%だった。8月にかけてはさらに2〜3ポイント低下する見通しだ。
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