船井電機111
 「本当ならきょうも会社にいたはず。突然のことで気持ちをうまく言葉にできない」。破産手続きに入った老舗AV機器メーカーの船井電機(大阪府大東市)
東京地裁の開始決定から一夜明けた25日、勤続30年を超える50代の男性社員はこう漏らした。
この日は社会保険から国民健康保険への切り替えなどについて行政手続きを確認していたという。

 24日は嵐のように過ぎた。

 「食堂に集まってください。説明があります」。午後1時半ごろ、社内放送が流れた。開始まであと15分くらいだった。集まったのは500人ほど。破産管財人に選ばれた片山英二弁護士のほか、同社の人事部門や管理部門の幹部らが出席し、説明が始まった。









「裁判所から破産の開始決定が出された」「残念ながら本日をもって解雇せざるを得ない」

 弁護士の言葉に頭が真っ白になった。

「今すぐ集まって」昼に突然のアナウンス「頭真っ白」 船井電機破産
 翌25日に振り込まれるはずだった10月分の給料も、予定通りには支給できないことも伝えられた。退職金は基金から支払えるとのことだった。

 なぜ破産の決断をしたのか。幹部からは「いろんな人が会社のお金を抜く行為も起こっていた。それは止めるべきで、伝統ある会社をぐちゃぐちゃなまま閉めてはいけない」との説明もあったという。

 約2時間の説明の後、人事担当が1時間半ほどかけて従業員一人ひとりに解雇通知書を手渡した。社員証やセキュリティーカードの返却も求められた。

 この男性社員が、私物を詰めた紙袋を手に帰路についたのは午後8時ごろ。「いきなり解雇されたが、何が起きているのか全然わからなくて」

組合の説明要求に社長は