
日本経済新聞社が実施した24年のNEXTユニコーン調査では、同社の9月末時点の推計企業価値は304億円。23年の調査から企業価値を12%増やした。23年末に国内外のベンチャーキャピタル(VC)などを引受先とする第三者割当増資で約43億円を調達した。このうち6割が米国や香港など海外の資金だ。
社員数85人のうち約7割を技術者が占めており、東芝やシャープなど大手メーカーからの転職者も多い。
「海外の大手パネルメーカーに高く評価されるなど顧客開拓が進んだことが大きい」。中野伸之社長は企業価値増加の背景をこう説明する。顧客となる海外メーカーとは同社の発光材料を使って有機ELディスプレーを実際の製造ラインでつくれるかどうか検証に入っていく段階だ。
キューラックスは有機EL分子が熱エネルギーの助けを借りて発光する新素材「TADF」を発明した九州大学の安達千波矢教授らが15年に設立した。TADFは製造にレアメタル(希少金属)が不要でコストが安く、100%の効率で発光できる反面、従来のりん光素材と比べて色の純度が低いという課題があった。
安達教授はTADFと蛍光を組み合わせて、発光効率を蛍光材料の4倍の100%に高める独自技術「ハイパーフルオレッセンス(HF)」を開発した。これをディスプレーに搭載すると青色の発光効率を上げられる。消費電力の低減につながるほか、「既存の有機ELに比べて再現できる色の領域が40%広がり、特に緑は鮮やかな色を出せるようになる」(同社)。
競合には、米プリンストン大学などの技術を活用して創業した米ユニバーサル・ディスプレーがいる。有機ELの発光材料をいち早く実用化し、足元の時価総額は約70億ドル(約1兆円)に上る。
キューラックスは技術力の高さを評価され、韓国のサムスンディスプレーやLGディスプレーからも出資を受けた。しかし、技術者中心の会社で事業化の取り組みが遅れていた。

24年10月には農薬開発などを手掛ける日本曹達と資本業務提携した。日本曹達はキューラックスの第三者割当増資を引き受けるとともに、自社の国内工場に有機EL発光材料の量産設備を導入するなど今後5年間で100億円程度を投じる。中野社長は「27年度に100億円を超える売り上げを狙う」と力を込める。

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