17135026012025000000-1住友化学は液晶パネルの主要部材である偏光板の生産能力を縮小する。テレビなど大型液晶向けで2024年末に中国の子会社売却を決めたのに続き、韓国でも生産から撤退し、有機EL(OLED)向けなどの拠点とする。日本の液晶産業の強みだった素材分野も中国勢に押され、事業の構造転換を迫られている。

テレビ向けの大型液晶パネルをめぐっては、日本勢で唯一残っていたシャープが24年8月に堺工場での生産を終えた。地方政府などの補助金をもとに大増産を続けた中国の京東方科技集団(BOE)らにシェアを奪われ、競争力を失った。

液晶パネル製造の中心が中国メーカーに移るのに合わせ、部品や素材でも日本の地位は低下している。光を調整して映像を鮮明にする偏光板では、かつて世界シェア首位だった住友化学も22年は2位(16%)、23年は4位(9%)に後退した。






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薄さなどが求められるスマートフォン向けと異なり、テレビ向けは技術での差異化が難しい。中国勢は杉金光電などが価格競争をしかけ、シェアを高めている。韓国のサムスンSDIも24年9月、偏光フィルム事業を中国企業に売却すると発表している。

住友化学は23年秋に大型液晶向け偏光板について国内外の生産能力の3割削減を発表した。24年12月には中国子会社2社を現地企業に売却し、同国の大型液晶向け偏光板事業から撤退すると発表。25年3月末に手続きが完了すれば、住友化学全体での同事業の生産能力は23年年初に比べ7割減少する。

同社は韓国でも大型液晶向け偏光板の生産から撤退を決めた。残る台湾の拠点では付加価値の高い超大型液晶向けに絞って供給を続ける見通しだが、岩田圭一社長は「大型液晶向けの偏光板は10年といった長い期間でみればゼロになるだろう」と話す。

日本の液晶産業の退潮傾向はガラスなどの分野にも広がる。液晶用ガラスを手がけ世界シェア2位のAGCは収益性の高い大型品に集中するため、25年3月末までに22年比で生産能力の2割削減を計画する。インキ大手のDICは24年末までに液晶材料からの撤退を完了させた。

ディスプレーの部材各社が活路を求めるのは、スマホ用など向けのOLEDや車載品のビジネスだ。住友化学の偏光板事業もOLED向けは好調で、愛媛県新居浜市内の工場では大型液晶向けの生産ラインをOLED向けに転換した。

住友化学は偏光板事業の売上高を明らかにしていないが、これまでは大型液晶向けが大半を占めてきた。構造改革後にはOLEDや車載向けの売上高の比率を事業全体の約9割にまで高める。OLED向けの売上高は将来的に1000億円規模に育てる方針で、韓国拠点もOLED向けのほか透明ディスプレーなど新規事業への転換を進める。

日東電工もスマホや車載などのOLED向け偏光板に注力する。OLEDでは使われる偏光板の枚数が液晶より減るが、保護フィルムなど別の材料の売上拡大も目指す。大型液晶向けの偏光板の生産は徐々に縮小し、競合企業への技術供与によるロイヤルティー収入に軸足を移している。

液晶向けの材料でも偏光板の基材となるフィルムについては、三菱ケミカルグループとクラレの2社がそれぞれ生産能力を増強している。フィルムの原料となる樹脂から一貫して開発・生産することで競争力を保っており、日本勢がなお強みを発揮する分野もある。

国内の素材各社がディスプレー以外の今後の成長領域と位置づけるのが、半導体の生産に使う素材や化学品だ。シリコンウエハーや感光剤(レジスト)、研磨剤などの分野では日本企業は高いシェアを持つ。

日本政府は30年に国内で半導体を生産する企業の合計売上高を20年の3倍の15兆円超に引き上げる計画を掲げ、半導体素材や材料も国内生産強化に向け補助金を出し支援している。液晶や太陽光パネルなど中韓勢の台頭で事業縮小を迫られた事例は少なくない。ある素材大手の幹部は「半導体素材では絶対に液晶の二の舞いになってはいけない」と決意を示す。




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