zu6VxFVT千葉大学大学院工学研究院の宮前孝行教授と大学院融合理工学府博士前期課程2年の鏑城竜也氏らの研究チームは、有機EL(OLED)をはじめとする有機デバイスに電圧をかけて駆動した状態で、内部の電位分布の状態を調べることのできる全く新しい計測手法を開発しました。

構成の異なる有機EL素子をこの手法を用いて調べることで、有機EL素子内部に組み込まれた極薄有機層が、内部に元々生じている電位の状態を変化させて発光効率や素子の寿命に影響を与えていることがわかりました。





 この計測法により、次世代有機EL素子の動作機構解明や長寿命化、また、省エネルギー化や低コスト化に必要な新規材料の開発の可能性が開かれました。さらに、それら新材料を実際の素子に組み込んだ際の電荷輸送特性を、分子レベルで解き明かすことも期待されます。

 本研究成果は、2025年3月10日に、英国学術誌Journal of Materials Chemistry Cに掲載されました。

 薄型テレビやスマートフォンなどのディスプレイに、有機ELが多く用いられてきています。有機ELは、異なる発光色を発する有機層と、その有機層の間で発光に必要な電荷を輸送する複数の有機層を積み重ねた多層積層構造になっています。素子自体の厚さは数100ナノメートルと極めて薄いため、フレキシブルで「折れ曲がる」ディスプレイの製作が可能です。

 有機ELのさらなる高機能化・省エネルギー化のためには、注入する電荷を効率よく発光層まで到達させて再結合させる必要があります。そのためには有機EL素子を構成する有機材料内部や異なる有機層界面での電荷の生成や輸送挙動を実際の素子のレベルで詳細に調べなければいけません。しかし厳重に密封された有機EL素子内部の電荷挙動を調べることは、容易なことではありません。そのため、有機EL素子内部の有機層中における電荷の生成や輸送過程を非破壊的な手段を用いて調べるための技術開発は急務でした。