
同社は2019年に、中国の総合エネルギー大手・協鑫集団(GCLグループ)の傘下で設立された。従来の結晶シリコン系太陽光発電企業とは異なり、ペロブスカイト太陽電池技術を中核とし、高効率、低コスト、高耐久性の次世代太陽光発電ソリューションの開発に取り組んでいる。
原材料コストや製造工程に優位性
足元では、中国のシリコン系太陽電池産業が競争激化により、業界全体が赤字に苦しむ状況に陥っている。 技術的な観点から見ても、結晶シリコン太陽電池の変換効率は基本的に限界に近づいている。一方、ペロブスカイト太陽電池の変換効率は理論上30%以上になると言われている。加えて原材料が豊富で低コストであることや、製造工程が比較的簡単であることから、高い優位性を持つ。
とはいえ、ペロブスカイト太陽電池の産業化にはまだ多くの課題も残されている。ペロブスカイト材料は、光や湿度、温度などの環境要因の影響を受けて劣化や故障が起こりやすく、電池の性能や寿命に影響を及ぼすため、材料の安定性向上は今後の業界発展における優先事項とされている。また、大面積パネルの製造が難しく、歩留まりが悪いといった課題もあり、量産化の制約要因となっている。
変換効率27%超え
こうした中、協鑫光電は着実に技術的成果を重ねてきた。同社が開発した2平方メートルサイズのペロブスカイト単結型パネルは変換効率19.04%を達成し、テュフ ラインランド(TÜV Rheinland)によるIEC 61215とIEC 61730の安全性・信頼性の認証を取得した。2024年4月には、1.71平方メートルのペロブスカイト積層型パネルで変換効率26.36%を記録。さらに、同年6月には、試作ラインで2050平方センチメートルの積層型パネルで変換効率27.34%を突破したという。
同社はこれまでに、複数回の資金調達を実施した。出資者には「紅杉中国(Hongshan、旧セコイア・チャイナ)」、「騰訊投資(Tencent Investment)」、シンガポールの政府ファンド「テマセク(Temasek)」、賽富投資基金(SAIF Partners)などの著名投資家が名を連ねている。
大規模生産ラインを計画
24年12月には、シリーズC1で約5億元(約100億円)の資金調達を完了し、江蘇省昆山市に建設中のギガワット規模の生産ラインに充てられる予定だった。この生産ラインは2025年に稼動を予定しており、量産が軌道に乗れば、製造コストは結晶シリコン電池モジュールの約50%にまで抑えられるという。
今後、変換効率が27%以上で業界規格を満たす2.88平方メートルの大面積ペロブスカイトパネルの発表を計画しているほか、建材一体型太陽光発電(BIPV)や車両一体型(TIPV)などの分野への応用拡大を見据え、商用化の加速を図る方針だ。
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