
業界団体の中関村儲能産業技術連盟がまとめたデータによれば、2025年1〜3月期に中国メーカーが海外の顧客から受注した蓄電システムは前年同期の約8.5倍の100GWh(ギガワット時、蓄電能力ベース)に迫った。
地域別で需要拡大が目立つのはオーストラリア、ヨーロッパ、中東、北アメリカなどだ。
■豪州やサウジで大型受注
例えば太陽光パネル大手の阿特斯陽光電力集団(カナディアン・ソーラー)傘下の阿特斯儲能(e-STORAGE)は2025年2月、デンマークのコペンハーゲン・インフラストラクチャー・パートナーズ(CIP)がオーストラリアで進める「サマーフィールド・プロジェクト」向けに960MWh(メガワット時)の蓄電システムを供給する契約を獲得した。
(訳注:CIPは再生可能エネルギー関連投資に特化した世界的なファンド運用会社)
また、電池大手の比亜迪(BYD)傘下の比亜迪儲能(BYDエネルギー・ストレージ)は同じく2月、サウジアラビアの国営電力会社であるサウジ電力(SEC)から12.5GWhの蓄電システムを受注。このプロジェクトは送電網に統合される蓄電システムとしては世界最大級であり、すでに接続済みの2.6GWhと合わせた蓄電能力は15.1GWhに上る。
海外からの受注のほとんどはリチウムイオン電池を用いた蓄電システムだが、その他の新方式にも受注事例が出てきた。例えば、バナジウム・レドックス・フロー電池(VRFB)と呼ばれる新型蓄電システムの開発を手がける中和儲能科技(ZHエネルギー)は、メガワット級のVRFBをヨーロッパのプロジェクト向けに納入したと発表した。
そんななか、中国メーカーを悩ませているのがアメリカのドナルド・トランプ大統領が仕掛けた“関税戦争”だ。
4月2日にトランプ大統領が「相互関税」を発表すると、アメリカ向けのプロジェクトは進捗に急ブレーキがかかった。ところが5月12日に米中が90日間の関税引き下げに合意したことで、一転して蓄電システムの対米輸出の急増が予想されている。
「トランプ政権は政策の振れ幅が大きい。ゆえに、関税の一時引き下げは(アメリカの)需要家の“買い急ぎ”を誘発するだろう」。財新記者の取材に応じた中国の業界関係者は、自身の見方をそう述べた。
■4月以降も需要旺盛
アメリカ以外の海外市場では、4月以降も蓄電システムの需要拡大が続いている。中関村儲能産業技術連盟のデータによれば、中国メーカーはトルコ、オーストラリア、イギリスなどから5月だけで合計10GWhを超える蓄電システムを受注した。
ただし留意すべきなのは、これらの受注の一部には法的拘束力がない意向表明書の段階のものが含まれており、実際の蓄電システムの納入量とは必ずしも一致しない可能性があることだ。
「意向表明書の数量や金額に浮かれることなく、現実の調達状況(の推移)をしっかり見るべきだ」。ある業界関係者は、そう注意を喚起した。
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