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異業種に挑戦する企業が増えている。日本経済新聞社記者の杜師康佑さんは「例えば、ガラスメーカーのAGCはバイオ医薬品事業で成長している。主軸のガラス事業が先細りという危機感の中、既存事業との連携がうまくいった」ことが要因だという――。

東京湾に面する横浜市鶴見区の工業地帯。巨大な工場が立ち並ぶJR鶴見線沿線にあるのは、大手素材メーカーAGCの横浜テクニカルセンターだ。同センターの一区画には、目下建設中の施設がある。

もともとガラスの加工工場や倉庫として使われていた建屋を一新し、500億円という巨額の資金を投じてバイオ医薬品の開発・製造受託拠点を建設する。都心や羽田空港からも近く、国内外からのアクセスが良好なほか、製造した医薬品を首都圏の大規模病院にタイムリーに供給できる好立地にある。

AGCは2025年からまず、人工的に増殖した細胞を投与することで治療につなげる「細胞治療薬」の開発受託サービスを始め、2026年には抗体医薬や細胞治療薬、メッセンジャーRNA(mRNA)医薬品の開発・製造の受託サービスも開始する。

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AGCはこれらのバイオ医薬品を製造するメーカーだが、AGC自身が自社ブランドで医薬品を販売しているわけではない。大手製薬会社やバイオベンチャーが顧客となり、医薬品の製造をAGCが受託する。製薬業界ではCDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)と呼ばれる立場だ。構造としては台湾の鴻海精密工業がアップルからiPhoneの生産を受託しているのに似ている。


話は十数年前に遡る。2010年、AGCは過去最高となる2292億円の営業利益を叩きだしていた。収益を支えていたのは液晶ディスプレーガラスと呼ばれる製品だった。

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液晶テレビは、液晶と呼ぶ物質が動作する原理で動いている。AGCはこの液晶をはじめとした部材を挟み込むディスプレーのガラスを製造している。2010年前後はブラウン管から薄型の液晶テレビにシフトが始まり、各家庭で置き換えが進んだ。AGCはテレビ産業で起きたイノベーションを背景に利益を稼いでいたわけだ。

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