
東京科学大学の研究グループは,乾電池(1.5V)1本をつなぐだけで光るという,世界最小電圧で発光する深青色有機ELの開発に成功した。
有機ELは大画面テレビやスマートフォンのディスプレーとして既に商用化されているが,光の三原色では最も高いエネルギーを有する青色の有機EL素子には,駆動電圧の高さや長期動作安定性の低さという課題がある。特に次世代のディスプレー規格を満たす深青色の低電圧化には成功していなかった。
研究グループは,アップコンバージョン有機EL(UC-OLED)において最終的に光る蛍光ドーパントの材料設計指針を解明することで,乾電池1本相当の電圧である1.5Vでピーク波長450nm以下の深青色を発光できる有機ELを開発した。
まずUC-OLEDに用いる蛍光ドーパントとして,有機ELデバイスにおいて狭線な純青色発光が得られることから近年研究が進められている,多重共鳴効果を利用したDABNA誘導体を発光層中に添加した。その結果,UC-OLEDの抵抗が,水色発光を示すペリレン誘導体を蛍光ドーパントとして加えた素子よりも増加し,発光開始電圧が2.5 V以上まで上昇してしまうことが分かった。
一方,UC-OLEDでは,電子とホールの再結合は発光層と電子輸送層の界面でのみ起こるため,DABNA誘導体が発光層中でホールをトラップしてしまった場合,その電荷は再結合できに発光層中に留まり続けるため,ホール輸送を阻害して,素子抵抗が上昇する要因になることが明らかになった。
そこで,DABNA誘導体と同じく多重共鳴効果により狭線な青色発光が得られるだけでなく,電子求引性のカルボニル基を多く持つためHOMO準位が深いという特徴のある,QAO誘導体を新たに合成した。
QAO誘導体を発光層中にドープしたUC-OLEDを作製すると,発光が1.5V付近から立ち上がることが分かった。またその発光スペクトルは半値幅が20~30nm程度であり,非常に狭線な青色発光が得られた。特に,TbCZ2COをUC-OLEDの蛍光ドーパントとして用いた場合には,発光ピーク波長447nm,半値幅20nmの深青色発光が得られた。
この発光は,国際照明委員会(CIE)1931 RGB色空間座標が(0.148,0.07)であり,次世代のディスプレー規格であるBT. 2020の理想的な青色に近い値を実現している。
研究グループは,今回の成果は,大画面テレビやスマートフォンディスプレーなどの発光素子の省電力化を通して,エネルギー利用効率の高い社会の実現に寄与することが期待されるとしている。
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