zu5米調査会社のマーケッツアンドマーケッツ(MarketsandMarkets)は8月23日、コンテナ型の蓄電池システム(Battery Energy Storage System=BESS)のグローバル市場が2025年の138億7000万ドルから、年平均成長率(CAGR)20.9%で安定的に成長し、2030年には358億2000万ドルに達するとの見通しを発表した。 同社が公開した調査報告書「コンテナ型蓄電池システムの市場調査(Containerized BESS Market Scope)」によるもの。

 また、戦略コンサルティングや市場調査を手がける米スカイクエスト・テクノロジー・コンサルティング(SkyQuest Technology Consulting)も8月25日、フロー(レドックスフローおよびハイブリッド型)電池の市場が2024年の4億2300万ドルから同21.5%で成長し、2032年には19億5200万ドルに達するとの予測を発表している 。

 背景にあるのは、グローバル規模で進む再生可能エネルギーの大量導入とそれによる電力系統網の柔軟性や安定化の需要増加である。また、災害などに起因する停電時の備えとして、一般家庭や産業用途、電力系統におけるバックアップ電源の需要も根強い。









 両社の分析範囲はそれぞれ蓄電池の筐体に着目するか、蓄電池技術の種別に着目するかで異なるが、いずれも定置型蓄電池であるという点で共通する。

 また、フロー電池では電解液のタンクやポンプ、発電セル、制御機器などをそれぞれ個別に設置する従来型のプラントに加え、近年ではタンクも含めて機器をすべてコンテナに格納するコンテナ型の採用が増加しているようだ。

コンテナ型BESS は、土地の形状や制約に応じてコンテナ単位で配置することで蓄電容量の柔軟な拡張が可能である。

 また、搬入や設置にクレーンやコンテナスプレッダ(荷役で使用されるコンテナ専用の吊具装置)、トレーラー・トラックを活用することが可能なため移設性が高く、比較的短い工期で迅速に導入できる 。

同報告書では、脱炭素や系統網の増強、非電化の地域や部門における電化が世界全体で急務となる中、コンテナ型BESSがクリーンエネルギーへの転換を可能とするうえでカギを握る技術になりつつあると指摘する。

 このため、コンテナ型BESSの市場成長を2030年まで維持するためには、適切な政策による支援や電力インフラ部門における大規模な投資が期待されるとしている。

 コンテナ型BESSで現在主流となっている蓄電池はリチウムイオン電池である。中でも正極材が低コストで安全性や長期の耐久性などの特性で優れるリン酸鉄系が、市場の70%以上と最も多い。

zu3定置型蓄電池の選択肢として、リチウムイオン電池以外では上述のフロー電池に加え、鉛蓄電池やナトリウム硫黄(NAS)電池もある。

2020年代に入るとナトリウムを正極の材料として使用するナトリウムイオン電池も実用化され、急速に普及が進みつつある。同電池はリチウムイオン電池に準じた特性を持つ。ナトリウムは海水や岩塩から精製できるため、リチウムより安価で供給リスクが低い。

マーケッツアンドマーケッツは2030年までのコンテナ型BESSの市場として1000kWh~5000kWh(1MWh~5MWh)の蓄電容量が事業対象として魅力的であり、最大の市場シェアを占めると予測している。具体的な用途としては、電気自動車(EV)などの充電インフラ、マイクログリッド、変電所、工場、蓄電池併設型の太陽光発電所などを挙げている。
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 また、高エネルギー密度や長寿命といった利点を持つリチウムイオン電池がコンテナ型BESSで支配的ではあるものの、初期投資の低さや安全性、リサイクルの容易さなどの点から、鉛蓄電池も一定の市場シェアを維持するという。

 吸収ガラスマット(AGM)や電解液のゲル化といった最新の技術を採用した鉛蓄電池が、コスト面の要求が厳しく短周期での蓄電用にコンテナ型BESSで採用されると見込む。

 コンテナ型BESSを含むエネルギー貯蔵技術の領域全体では、ハイブリッド発電所や「ハイブリッド蓄電所」の増加といった傾向も見られる。

 ハイブリッド発電所としては、蓄電池併設型の太陽光発電所以外にも風力発電と蓄電池、火力発電所と蓄電池など様々な組み合わせがある。いずれも需要と供給の平準化や出力抑制の緩和、系統網安定化といった点で単独の発電所よりも優れる。

蓄電所においても、リチウムイオン電池とナトリウムイオン電池を組み合わせたハイブリッド蓄電所が建設される事例が出てきた。中国の中国南方電網は5月下旬、雲南省文山壮族苗族自治州に宝池蓄電所を建設したと発表している。

同蓄電所では3万4000m2の敷地内に出力200MW、蓄電容量400MWhの蓄電池を設置している。総工費は4億6000万人民元(約95億円)。周辺に立地する30カ所の太陽光や風力発電所の運用に寄与するという。

 特性の異なる蓄電池技術を適切に組み合わせることで、短周期や長周期変動を含む様々な状況下において、需給調整やピークシフトの適切な実施などが可能となるという。

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