February 24, 2026
海に浮かべる浮体式洋上風力発電、国内初の商用運転開始 再エネ拡大へ知見蓄積

海に風車を浮かべる大型風力発電が国内で初めて商用運転を始めた。21日、長崎県五島市で報道陣に公開した。これまで国内での実証や建設ではトラブルが相次いだ方式だ。本格的な発電で得られる知見は技術などの課題克服への一歩となる。陸から離れた水深の深い海域にも設置できる方式が拡大できれば、日本にとってエネルギー調達の幅が大きく広がる。
「浮体式」で海域を有効活用
海上で発電する洋上風力には風車の土台を海底に直接固定する「着床式」と、土台を海に浮かべる「浮体式」がある。建設技術が確立している着床式が国内では主流となっている。三菱総合研究所の調査によると、浮体式は深い海域でも稼働できるため、設置可能な海域は40倍近くに広がる。
「さらに大型化して日本中に浮体式が設置されていく上で、ものすごく大事な経験を積むことができた」。事業の代表企業の戸田建設の大谷清介社長は同日の記念式典で報道陣にこう話した。記念式典の会場の福江島から約7キロメートルの沖合には出力2100キロワットの風車8基が羽根を回す。
同事業には戸田建設のほか、ENEOSホールディングス子会社のENEOSリニューアブル・エナジー(東京・港)、大阪ガス、INPEX、関西電力、中部電力が参画している。戸田建設は13年に同じ五島で実証機を1基置くなど、独自技術を取り入れ研究を進めてきた。

政府は浮体式洋上風力の拡大を将来の再生可能エネルギー導入の柱の一つと位置づける。25年には洋上風力の設置が可能な海域を現行の領海内から排他的経済水域(EEZ)内まで広げた。日本の領海とEEZを合わせた面積は世界6位で、洋上風力拡大の基盤を整えた。
基幹部品製造など種まきも
国土交通省や経済産業省などがまとめた計画では40年までに1500万キロワット以上相当の形成を浮体式で目指す。29年度中をめどに大型事業を形成し、基礎部分などの部品サプライチェーン(供給網)の国産整備も盛り込んだ。
企業の種まきは始まっている。浮体式の技術や供給網の構築に向け、発電事業者や建設業者などが複数の事業者組合を立ち上げた。丸紅や中部電力子会社などはそれぞれ秋田県沖や愛知県沖で政府の補助を受けた実証事業に取り組む。JFEエンジニアリングは基幹部品の生産拠点を整える。
外資勢も事業性に期待する。洋上風力開発の仏BWイデオルは東北電力と組んで岩手県沖で調査を進める。安価な基礎部品も開発する。海上開発には政府許可が欠かせない。BWイデオル幹部のローラン・ベルディエ氏は「準備はできている。政府が浮体式の事業を公募してほしい」と話す。
浮体式は複数の逆境に直面してきた。10年代に丸紅や東京大学などが福島県沖に設置した3基は技術的な問題が相次ぎ21年までに撤去した。政府が600億円以上を投じ、実証研究の位置づけだった。採算面での課題の解決策が見いだせなかった。
今回の五島も簡単ではなかった。建設中に海上に浮かせる基礎部品の不具合が見つかり、工事が一時停滞した。問題の解消のため、当初計画から約2年遅れての運転開始となった。戸田建設の牛上敬・浮体式洋上風力発電事業推進部長は「設置していた風車を陸に戻し、再発のないように直している」と振り返る。
ある風力関係者は「五島にあるような浮体式の事業で利益が出せるのかは不透明だ」と見る。着床式でもコスト高に苦しみ、三菱商事連合などが撤退した。より費用のかかる浮体式で採算を確保するのは難しいとの見方が強い。
基幹部品の製造体制の確立や送電線の整備など技術面の課題も山積する。それでも五島の事業に出資するINPEXの加藤博史常務執行役員は「英国やオランダは遠浅の海が広がっているが、日本はそうではない。勝機があるのは浮体式ではないか」と期待を寄せる。






































