May 22, 2026
堺から大阪都心へ 10年ぶり本社移転で再出発 シャープにみえるか「半歩先」の生存戦略 関西経済点描

シャープが3月、本社を液晶事業の象徴だった堺工場(堺市堺区)から大阪市中央区のビジネス街に移転した。経営危機に陥っていた2016年に「第2の創業の地」である大阪市阿倍野区の旧本社を売却し、堺に移って以来、10年ぶりの大阪市内回帰だ。社員は「交通も便利で働きやすい」と歓迎するが、再成長の道筋はなお見えない。新しい企業スローガン「ひとの願いの、半歩先。」にふさわしい事業を次の成長の柱として育てられるか。正念場といえる。
■便利な新本社
「構造改革から成長に向かって進んでいく。環境が変わることで(社員から)新たな発想が出ることを期待したい」
新本社が本格稼働した3月16日、当時の沖津雅浩社長(現副会長)は、こう力を込めた。
大阪メトロ堺筋線・中央線の堺筋本町駅出口すぐのオフィスビルをほぼ丸ごと借りた新本社では人事や法務、経理など主要管理部門の約800人が働く。通勤や営業など交通利便性が向上し社員のモチベーションがアップ、人材採用面でもメリットが見込まれる。
もともと堺工場は生産現場として臨海工業地帯に建設しただけに鉄道駅などからも遠く交通利便性は二の次。「不便な本社がどれだけ社員のモチベーションを下げているか経営層に分かってほしい。優秀な人材が敬遠する理由になっている」との声が上がっていた。
堺工場は2024年に大型液晶パネル事業の苦戦から生産を停止。工場の土地や建物の一部についてデータセンターに転用するソフトバンクやKDDIに売却。本社棟は積水化学工業が次世代太陽電池の「ペロブスカイト太陽電池」量産のため取得し、シャープ本社も移転を迫られていた。
旧本社は経営危機に陥っていた16年3月に道路向かいの田辺ビルとともに計188億円で売却した。台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業側がシャープを傘下に収めた後に買い戻しを打診したが、旧本社は合意に至らず、田辺ビルだけを売却時より高値とされる138億円で買い戻した。老朽化した田辺ビルの利用には建て替えなどが必要となるため、新たな本社としての賃貸オフィスを探していた。
本社の移転先を巡っては、沖津氏が旧本社のあった大阪市阿倍野区を含め検討するとした経緯があり、今後は田辺ビルの利用法も課題となる。
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