June 12, 2026
グーグルが世界最大30GWhの蓄電池、米スタートアップのフォームエネルギーの「鉄空気電池」を採用
米国ミネソタ州、ミネアポリスに本社を置く大手電力会社であるエクセル・エネルギー(Xcel Energy)は、今年2月に同州のパインアイランドに建設されるグーグル(Google)の新しいデータセンターに電力を供給すると発表した。 個人向け電子機器から企業活動、政府サービスに至るまで、インターネットが経済社会を支える中核インフラになっていくに従い、データセンターの需要が急増しており、急ピッチで建設が進んでいる。
新データセンターへの電力供給はエクセル・エネルギーが担い、グーグルは、このデータセンター向けの電力サービスに関連する費用をすべて負担する方針である。地元顧客にコストを転嫁せずにクリーンエネルギーの導入を進めるため、両者はミネソタ州で「クリーンエネルギー導入加速負担金(Clean Energy Accelerator Charge=CEAC)」という新たな料金制度を設計した。
今回、同州で計画されている、グーグルとの約1GW規模のデータセンター向け電力供給契約は、今後ほかの州で展開する「大口需要家向け料金制度」の先行的なモデルに位置づけられるかもしれない。
グーグルがインフラの追加費用を負担
エクセル・エネルギーは、新たな大口顧客による電力需要が、既存顧客のコスト増につながらず、電力サービスの信頼性が維持されることを確実にする方針を掲げている。これに対応してグーグルは、大口需要に関する同州の規制・法的要件に沿って、新サービスに関わるすべての追加費用を負担する契約になっている。つまり、既存の一般顧客に、データセンター向けの新たなコストを転嫁しない設計になっている。
グーグルがミネソタ州に建設するデータセンターには、電力会社から出力1.9GWもの新たな風力・太陽光発電からの電力、そして長時間の充放電サービスが提供される計画である。具体的には、出力1400MW(1.4GW)もの風力発電、出力200MWの太陽光発電、出力300MW・容量30GWhもの長時間のエネルギー貯蔵設備となっている。この長期間のエネルギー貯蔵設備には、米スタートアップのフォームエネルギー(Form Energy)が開発する「鉄空気電池システム」を採用する。「鉄空気電池」は、再生可能エネルギーを長時間、蓄えるための大型蓄電技術として注目されている。仕組みは比較的シンプルだ。鉄が酸素と反応して錆びる(酸化鉄に変化する)ときに電気を取り出し、逆に電気を加えることで錆びた鉄(酸化鉄)を元の状態に戻す(還元する)。同社はこの反応を「可逆的な錆び」と説明している。
この蓄電設備の大きな特徴は、最大100時間にわたって電気を供給できる点にあるという。太陽光や風力は、天候によって発電量が大きく変動する。晴れや強風の日に余った電気を蓄え、曇天や無風の日が数日、続くような場面で放電できれば、再エネの不安定さを補いやすくなる。
実際、グーグルによるミネソタ州のプロジェクトは、GWh(ギガワット時)ベースもの巨大なエネルギー容量を持ち、発表済みのプロジェクトとしては世界最大の蓄電池プロジェクトとなる。この100時間対応の蓄電池システムは、発電量が多い一方で需要が少ない時間帯にはエネルギーを貯蔵し、需要が伸びる時間帯に電力網へ放電する。こうした平準化パターンが複数日にわたる場合でも、最も必要とされるタイミングで安定した供給力を提供し、電力網の信頼性を強化する。
現在、蓄電池システムの主流はリチウムイオン電池だ。リチウムイオン電池は反応が速く、短時間で大きな電力を出し入れできるため、スマートフォン、EV(電気自動車)、数時間単位の系統向け需給調整に向いている。一方で、数日分の電力を低コストで蓄える用途には限界がある。
その点、鉄空気電池は、鉄、水、空気といった比較的安価で入手しやすい材料を使うため大規模化によるコストメリットが大きく、長時間・大容量の蓄電に適している。短時間の出力速度ではリチウムイオン電池に劣るものの、数十時間から数日単位で電力を供給する用途では、コスト面や資源面で優位性を持つ可能性がある。
鉄空気電池は、リチウムイオン電池を置き換えるものではなく、補完する存在といえる。短時間の調整はリチウムイオン、長時間のバックアップは鉄空気電池という役割分担が進めば、再生可能エネルギーをより安定的に活用できる可能性がある。
再エネへの投資の他に、グーグルは、同プロジェクトに関連する新たな送配電網インフラ費用を負担する。
具体的には、CEACの一環として、エネセル・エネルギーの「電力供給力強化プログラム(Capacity*Connect Program、*も名前の一部)」に5000万ドルを拠出する予定だ。このプログラムは、エネセル・エネルギーの電力システム全体に小規模な蓄電池を分散配置する構想で、需給調整能力を増強し、電力網を強靭化するものだ。こうしたCEACを通じた、新たな再エネ発電と蓄電システムは、現在すでに電力構成の70%をカーボンフリー電力に転換しているエネセル・エネルギーの脱炭素への取り組みをさらに前進させる。
グーグルは、今回のエネセル・エネルギーとの提携について、データセンターへの電力供給のあり方を再構想する画期的なものだとしている。同社は、データセンター事業の成長を電力分野のさらなるイノベーションにつなげ、地域社会にとっても、エネルギーの未来がよりクリーンで手頃なものになることを支援するとしている。
急増するデータセンターの電力需要をいかに賄うかが世界的な課題になっているなか、その巨大な電力需要を牽引役に、地域の電力網をカーボンフリーに再構築していこうという逆転の発想がそこにある。






































