September 01, 2026
【核融合プラズマから直接電気を取り出すことに成功】米企業Realta Fusionが実証
核融合発電というと、多くの人は「超高温のプラズマで熱を作り、その熱でタービンを回して発電する」仕組みを思い浮かべるかもしれません。しかし、米国の核融合スタートアップRealta Fusionは、少し違う道を示しました。プラズマ中を飛び出す荷電粒子のエネルギーを、熱に変える前にそのまま電気として取り出す「直接エネルギー変換」に成功したというのです。
2026年6月19日、Realta Fusionはウィスコンシン大学マディソン校と共同で、磁気ミラー型核融合実験装置「WHAM」を使い、プラズマの運動エネルギーを電流として回収する実験を行いました。同社によれば、商業核融合企業が核融合プラズマに対して直接エネルギー変換を実証したのは初めてです。
通常の発電では、まず熱を作り、その熱で水を沸かし、蒸気タービンを回して電気を作ります。核融合発電でも、最初の実用炉ではこの方式が中心になると考えられています。
一方、Realta Fusionが実証した直接エネルギー変換、DECは、プラズマ中の荷電粒子が持つ運動エネルギーを、静電場を使って直接電流に変える技術です。つまり、熱に変換してからタービンを回すのではなく、粒子のエネルギーをそのまま電気回路に流し込むような考え方です。
今回の実験では、WHAMの端部に3層の細かいメッシュ状グリッドを備えた変換器を取り付けました。そこを通って出てくる荷電粒子を静電的に減速させることで、約100ボルト、複数アンペア規模の電流を取り出したとされています。規模としては「数個の電球を点灯できる程度」ですが、重要なのは、実際のプラズマ運転中にこの変換を示した点です。
Realta Fusionが採用しているのは、トカマク型ではなく「磁気ミラー型」と呼ばれる方式です。磁気ミラーは、強い磁場でプラズマを閉じ込める一方、装置の両端から一部の粒子が抜けていく性質があります。
従来、この「漏れ」は閉じ込め性能を下げる弱点と見られてきました。しかしRealta Fusionは、これを逆に利用しようとしています。端から出てくる荷電粒子にはエネルギーが残っているため、その流れを直接エネルギー変換器で受け止め、電気として回収するという発想です。
さらに、磁気ミラーではヘリウム灰や不純物が自然に排出されやすいという利点もあります。核融合を長時間続けるには、燃料となるプラズマを清浄に保つ必要があります。Realta Fusionは、この排出のしやすさとエネルギー回収を組み合わせることで、磁気ミラー型核融合炉の効率を高められると考えています。
同社は、将来の重水素・三重水素、いわゆるDT核融合炉では、発生エネルギーの約80%が中性子、約20%がアルファ粒子として出ると説明しています。中性子のエネルギーはブランケットで熱として利用されますが、アルファ粒子は電荷を持つため、直接エネルギー変換と相性が良いとされています。
ただし、今回の成果を「核融合発電に成功した」と受け取るのは早すぎます。Realta Fusion自身も、今回の実験は正味の発電や、核融合で生まれた大規模な電力を直接取り出したものではないと明確に説明しています。
WHAMはまだ試作規模の装置で、燃料も重水素のみです。今回直接変換されたエネルギーの多くは、プラズマを加熱・維持するために外部から投入したエネルギーに由来します。つまり、今回の実験は「核融合炉が発電所として成立した」という段階ではなく、将来の発電効率を高めるための重要な部品技術を実機プラズマで示した段階です。
Realta Fusionは今後、この技術を数キロワット級、さらに将来的にはメガワット級へ拡大することを目指しています。直接エネルギー変換が実用化されれば、核融合炉で必要な入力電力の一部を効率よく回収し、より低い核融合利得でも「正味で電気を生み出す」条件に近づける可能性があります。
また将来的には、重水素・三重水素だけでなく、D-D反応やD-ヘリウム3反応のような先進燃料サイクルにもつながるかもしれません。これらの燃料では、より多くのエネルギーが荷電粒子として出る可能性があり、直接エネルギー変換との相性がさらに高まるからです。
核融合発電はまだ多くの課題を抱えています。しかし今回の実証は、磁気ミラー型核融合炉にとって、これまで弱点とされてきた「粒子の漏れ」を、エネルギー回収の仕組みに変える可能性を示しました。発電所として実用化されるにはまだ時間がかかりますが、核融合の未来に新しい選択肢が加わったと言えそうです。
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